日本補綴歯科学会雑誌
Online ISSN : 1883-177X
Print ISSN : 0389-5386
ISSN-L : 0389-5386
歯冠部残存歯質の有無と合着用セメント層が支台築造歯の象牙質内応力分布に及ぼす影響
岡本 和彦猪野 照夫天野 秀雄荒井 学鈴木 めぐみ曽根 峰世
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 48 巻 4 号 p. 602-611

詳細
抄録
目的: 本研究の目的は, 歯根破折を惹起するといわれるポストコアで支台築造された歯における歯冠部残存歯質の有無と合着用セメント層が歯根部象牙質の応力分布に及ぼす影響について解明することである.
方法: メタルを用いたポストコアにより支台築造を行い, 陶材焼付鋳造冠を装着した上顎中切歯について, 歯冠部残存歯質の有無, そして, 合着用セメント層の材料物性値をMMA系レジンセメントあるいはヤング率を1.00MPaとして設定した場合について, 三次元有限要素法を用いて歯根部象牙質内に生じる応力分布, さらに合着用セメント層内における応力の方向について解析した.
結果: 歯根部象牙質および合着用セメント層内のvon Mises応力は, セメント層がMMA系レジンセメシトであると, 歯冠部残存歯質の有無にかかわらず唇舌的に対称的な応力分布を示したが, 低ヤング率の場合では, 歯冠部残存歯質の有無によって応力分布が変化し, 歯冠部残存歯質のないほうが唇舌的に非対称的な応力分布を示した. しかし, セメント層内の応力分布は, 歯冠部残存歯質のないほうが, セメント-象牙質界面に対して垂直な引張応力の発現する範囲が広かった.
結論: 歯根部象牙質内の応力分布は歯冠部残存歯質の有無によって, また, 合着用セメントの物性によって変化することが示唆された.
著者関連情報
© 社団法人日本補綴歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top