抄録
顎関節症1型の筋スパズムスとIII型の復位とを伴う関節円板前方転位が認められる, デスクレパンシーを伴う上顎前突症例に対し, 顎関節症の臨床症状を寛解した後, マルチブラケット法を用いて歯列咬合の改善を行った。
初診時にカウンセリングとソフトレーザーの照射を行った結果, 翌日に癒痛は軽減し, 開口度の改善も認められた。その後3回のカウンセリングとソフトレーザーの照射によって, 1週間後には全ての臨床症状が消失した。マルチブラケット法による歯列咬合の改善期間中, さらに, 動的治療終了後6年を経過した現在まで顎関節症状は認められない。
本症例のように, 心理的要因が顎関節症状出現に関与している可能性があると考えられる症例の治療においては, まず, 癒痛の緩和と心理的ストレスの解消が必要である。そのため, 治療の初期段階でカウンセリングとソフトレーザーの照射に積極的に取り組んでいくことが臨床上有益と考えられた。