2003 年 18 巻 2 号 p. 99-101
外科的顎矯正治療後に, 咬合の異常感の他, 姿勢のねじれ, 全身倦怠など多彩な全身的不定愁訴を呈していた39歳, 女性の顎関節症患者に, SNRIであるmilnacipranによる治療を行った. SNRIを6ヶ月かけて30mg/dayから120mg/dayまで増量したところ, 咬合の異常感, 広範囲の疼痛や随伴症状の睡眠障害, 慢性疲労, 全身のこわばり, 痺れ感, 抑うつ気分などが, 経時的および用量依存的に改善していった. 本症例は線維筋痛症の診断基準も満たしており, 両者の随伴症状の重複や抗うつ薬への反応の共通性から, このタイプの顎関節症の背景には線維筋痛症と類似した中枢性の病態生理学的機序が存在するのではないかと考えられた.