人工知能
Online ISSN : 2435-8614
Print ISSN : 2188-2266
人工知能学会誌(1986~2013, Print ISSN:0912-8085)
知的触発を伴う協調的活動を支援するアウェアネスシステムに関する研究(知識情報インフラストラクチャ)(<特集>人工知能分野における博士論文)
伊藤 禎宣
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2004 年 19 巻 1 号 p. 98

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抄録

本論文は,知的触発を伴う協調的活動を支援するアウェアネスシステムに関する研究をまとめたものである.コミュニティの協調的活動における個別作業中心タスクと共同作業中心タスク間での相互依存構造の変化に着目し,各局面の協調的活動支援手法の提案と評価を行った.まず,個別作業中心タスクにおいては,作業者の思考や活動を阻害せずに,知識や興味関心に基づく適切な協調的関係の構築を実現するため,自然な手書きインタフェースによるアノテーション行為を介した適応的情報共有環境"SmartCourier"を構築した.本システムは,電子文書の閲覧やアノテーション行為履歴から興味関心プロファイルを生成し,協調的情報検索手法を用いて適応的なアノテーション共有や文書資料推薦といった協調的活動支援サービスを提供する.これにより,潜在的に協調的関係が形成可能な他者や未知の情報資源への気づきを促すものである.学会全国大会などでの実験結果から,既存の明示的コミュニティを越えて利用者間の交流を促し,知的触発を伴うコミュニティウェアとして有効であることが示された.また,実世界の対象物へもアノテーションを可能にする,実世界指向の協調的活動支援システムを提案した.装着利用可能な赤外線利用のLPS(Local Positioning System)とビデオ入力,HMD(Head Mount Display)などから構成され,拡張現実(augumented reality)的表示によるアノテーションを実現するものである.共同作業中心タスクにおいては,円滑かつ継続的な社会性指向対話関係の醸成を支援する,テキストベース電子会議環境での対話状況アウェアネス環境の構築を行った.本研究はコミュニティ内の対話関係や対話アクティビティの情報可視化機能,対話内容ログの解析機能を有し,研究室内での運用と評価実験を行った.その結果,対話関係成立率の上昇,対話関係継続回数の増加といった定量的評価と,対話アウェアネスの認識による社会性コミュニケーション成立といった定性的評価を得ることができた.

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© 2004 人工知能学会
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