2016 年 18 巻 1 号 p. 10-18
急速な高齢化の進展を迎える我が国は、認知症患者の急増が大きな社会問題の一つとなりつつある。認知症ケアの担い手であるケアマネジャーやヘルパー、訪問看護師ら地域援助職に対して、認知症に関する知識や認知症ケアを行う上で困難と感じている項目を抽出し、その背景要因を調査した。相模原市内にて介護ならびに在宅サービスを提供している施設等に所属している地域援助職1,093名を対象に質問紙調査を行った。アンケートの回収数は399通、回収率は36.5%であった。
医療・介護資源において地域援助職は、デイサービス等の昼間の介護資源に対する充足感を、入所施設や入院加療施設等よりも感じていた。
地域援助者の41.4%が認知症介護実践者等研修を受講していた。研修の受講は知識の習得のみならず、身体疾患を合併する認知症患者への助言・対応における地域援助者自身が抱く不安を軽減することに寄与すると推察された。
66.7%の地域援助職に認知症の相談経験があったが、「患者への療養指導」「家族への療養指導」ができていないとする回答が半数以上を占めた。認知症の患者家族に身近に接している地域援助職には、「かかりつけ医への相談」が気軽にできる体制や研修の整備が必要である。認知症ケアには多職種による援助が不可欠であり、情報共有ツールとして認知症地域連携パスの有効性があると考えられた。