2017 年 19 巻 1 号 p. 10-18
本研究は多施設の経尿道的前立腺手術クリニカルパス(以下、パス)データ分析結果の可視化モデルをBusiness Intelligence tool(BIツール)で構築しweb上で共有したことと、さらに多施設共通経尿道的前立腺手術パスを作成、運用した結果を評価したものである。1,074症例データを術式別に比較検討し、市販表計算ソフトのBIツール機能とメール機能を利用してクラウド上で可視化共有した。術前入院期間、抗生剤投与日数、飲水開始時期、補液期間、排尿カテーテル留置期間、手術時間や、術後入院期間等のアウトカムについて、術式を問わず施設間ばらつき、施設内ばらつきが目立ち、施設方針の相違、主治医要因、患者要因が推察された。一方、24例の多施設共通経尿道的前立腺手術パス運用結果は、アウトカムの改善や施設内ばらつきの解消が観察された。今回の研究で多施設共通パスの作成、運用の困難さが明らかになった一方で、まず固有のパス分析データをweb上で比較することで施設内の標準化と改善を推進する意義も理解できた。そのうえで多施設共通パスに取り組むことが肝要と思われた。BIツールは施設間の比較、情報共有とパスによる改善活動に有用な手段になると思われた。