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重症心身障害児はリラックス空間を認識しているか? : 能動的表出行動を促進する支援技術利用に関する基礎的研究
苅田 知則
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2012 年 27 巻 4 号 p. 3-15

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抄録

重症心身障害児(重障児)は,脳の器質的病変等によって身体障害と知的障害を併せ持つため,自身の心身機能のみを用いて環境と相互作用することが難しい.故に,障害支援技術(AT)の利用が必要不可欠であるが,ATを導入・調整するためには,能動的表出行動を促進する物理的環境が重要となる.特に,過緊張は能動的表出行動を制限するため,リラックス空間が効果的だが,実証研究がほとんどなかった.本研究では,(1)重障児はリラックス空間を認識しているか,(2)その認識を共有するにはどのような定量的検討を行えばよいかを検討した.重障児28名を参与観察し,生理指標による定量的測定を試みた結果,(1)集団保育場面では反応が乏しい子でも,リラックス空間では能動的表出行動が認められ,物理的環境の変化を認識している,(2)唾液中のアミラーゼ活性量が定量的測定として有効であることが示唆された.また,重障児のリラクゼーションに環境特性が及ぼす効果モデルを提起した.

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