スポーツ教育学研究
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走り幅跳びの学習指導に関する基礎的研究
小学校児童の跳躍距離にかかわる要因の分析
中川 宏青谷 清
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1991 年 10 巻 2 号 p. 99-112

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抄録

8-12歳児 (2-6学年) の男女児童630名に任意の距離から走り幅跳びを行わせ, 跳躍距離を測定するとともに跳躍動作を記録した。分析の対象はこれらの中で通常の片足踏切 -両足着地の運動様式を示す児童542名とした。
まず, 跳躍距離にかかわると考えられる14項目について動作分析を行い, 次に, これらのデーターから走り幅跳びの跳躍距離を伸ばすためにかかわる要因を年齢別, 性別に明らかにしようとした。すなわち, 動作分析, 体格からの得られた16項目を説明変数, 跳躍距離を目的変数として, 重回帰分析を試み, 次の2点について検討した。
(1) 16項目の内, 年齢別, 性別にいずれの要因が跳躍距離に関与するのか, (2) これらの要因はどのように加齢的に変化するのか。
得られた結果を要約すると次の通りである。
1) 9歳児の女子を除いて, 各年齢, 男女共通に跳躍距離にかかわる要因は助走速度, 最高跳躍高, 着地角が導き出された。
2) 上記3つの要因の内, 一般に助走速度の寄与率が最も高く, 最高跳躍高, 着地角の寄与率は低い傾向がみられた。
3) 男女ともに10歳を境として助走速度の寄与率は加齢的に減少するのに対して, 最高跳躍高の寄与率は増加する傾向がみられた。
また, 男子では10歳まで助走速度の寄与率は増加するのに対して, 着地角の寄与率は減少する傾向がみられた。
4) 11, 12歳児の男女児童について最高跳躍高の寄与率を高めた要因として, 男子では踏切時遊脚側の膝関節角を狭くする動きが見いだされ, 女子では接地時の両大腿角を狭めることと遊脚側の大腿部を引き上げる動きが見いだされた。
5) 以上の結果, 小学校児童について跳躍距離を伸ばす要因として助走速度, 最高跳躍高, 着地角があげられた。なかでも, 各年齢を通して助走速度を伸ばすことは重要であり, 次に11歳以降ではそれに加えて跳躍高を高めることが重要であることが認められた。

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