本研究は, 視覚障害児と晴眼児を被検者として, 視覚と空間概念の関係を明らかにする事を介し, 視覚障害者の投技能発達のための指導法を探る事を目的とした。
空間概念の属性として設定した運動感覚性の運動意識, 身体意識, 方向意識, 空間意識, 及び時間意識の5つの下位概念に関する測定項目及び投運動の調整能力に関する測定項目を設定し, 中学部の視覚障害児20人と中学校の晴眼児20人を対象として測定を行った。
その結果,
1) 本研究における視覚障害児と晴眼児は, 運動感覚性の運動意識, 身体意識, 方向意識, 空間意識, 及び時間意識において同様の発達水準にあり, 空間概念について同様の発達水準に達しているものと考えられた。そしてこの事は, 視覚障害児も晴眼児と同様の運動学習を経験した結果として推論された。
2) 投運動の調整能力においても, 視聴覚障害児と晴眼児は同様の発達水準にあり, この結果から, 高次の投運動は, 空間概念によって操作されている事が推論された。
3) 以上の事から, 視覚障害児の投技能を向上させるためには, わかりやすい豊かな刺激による盛んな遊びを介して, 感覚機能, 移動運動, 及び探索能力の発達をはかりながら, 感覚運動性の感覚意識を育て, 触覚と言語を介したボール遊びを通じて, 身体とボールの大まかな関係を知覚させ, 投げの基礎的な学習経験を与えながら, 身体意識を育て, 投げの力, 及び距離を調整させる事で方向意識, 空間意識, 及び時間意識を育て, そしてなるべく簡単な状況のミニゲームから取り入れ, 状況判断の力を育てながら, 空間概念を獲得させ, この空間概念で投技能を極め, 投てきが含まれるスポーツを楽しめるようにすべきであることを明らかに出来た。