スポーツ教育学研究
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小学校体育授業に対する教師の反省的思考に関する研究
高学年担任教師の学習成果 (態度得点) の相違に着目して
厚東 芳樹梅野 圭史林 修高村 賢一上原 禎弘
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2005 年 25 巻 2 号 p. 87-99

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抄録

小学校高学年 (5・6年生) 担任教師 (88名) を対象に、反省的実践の内部事項である「反省的思考」に焦点をあて、態度得点の高い教師群とそうでない教師群とで、教師の「反省的思考」の観点が具体的にどのように異なるのか明らかにすることを目的とした。
得られた結果の大要は次の通りである。
1) 体育授業に対する教師の反省的思考の枠組みを因子分析法により検討した結果、「観察・判断」「指導技術」「授業計画」「学習記録」「教師の運動理解」「子どもの学び合い」「同僚との共同実践」「安全・管理」の計8つの因子が導出された。加えて、予備的カテゴリーとの対応関係から、上記教師の反省的思考の枠組みは、巨視的な見方から微視的な見方まで多様に存在していることが認められた。
2) 反省得点 (各因子を構成する代表項目に対する回答の平均値) と態度得点の診断レベルとの対応関係をみた結果、診断レベルの最も高いHSC群の反省得点は、8つの因子すべてにおいて高値を示した。また、診断レベルが中程度のMSC群と最も低いLSC群の反省得点は、「教師の運動理解」因子を除くすべての因子において、態度得点の診断レベルが高いと反省得点も高いとする関係が認められた。
3) 態度得点の相加平均以上の上位群とそうでない下位群とで、各因子を構成する代表項目に対する回答の平均値を比較した結果、20項目中11項目において有意差が認められ、いずれも上位群の方が下位群に比して平均値の高い結果であった。また上記11項目から、態度得点の高い教師は、反省的思考の観点として、「授業設計場面」では子ども一人ひとりにあった授業計画が立案できているかどうかの観点を、また実際の「授業展開場面」では子どもたちが学習課題を明確に掴み、課題を自力解決できているかどうかの観点を、それぞれ有していることが認められた。
4) 上記3) にみる上位群の反省的思考の観点は、体育授業中に生起する「出来事」への気づきと関係している可能性があるものと考えられた。

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