頭頸部外科
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原著
当科における喉頭垂直部分切除術の臨床的検討
―手技の工夫と術後喉頭機能からみた有用性について―
波多野 篤長岡 真人濱 孝憲青木 謙祐清野 洋一加藤 孝邦
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2013 年 23 巻 1 号 p. 69-76

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抄録
目的:喉頭機能温存治療である喉頭垂直部分切除術(以下:部切術)に関して,病変制御,喉頭温存と共に術後の喉頭機能を評価することで部切術の有用性を検討すること。
対象と方法:慈恵医大第三病院耳鼻咽喉科において部切術を施行した5症例。術後病変の再発,転移の観察と共に最長発声持続時間の測定とGRBASスコア等を用いて術後の喉頭機能評価を行った。
結果:TNM分類では,声門型T2N0 1例,放射線治療後rT2N0 1例,T3N0 2例であり,声門上型ではT2N0 1例であり,全例M0であった。垂直部分切除が5例に施行された。術中,内視鏡を用いて内腔から明視下に切除を行うことと,舌骨付き胸骨舌骨筋弁を用いて輪状軟骨再建を行う工夫を行った。術後局所感染のために1例に喉頭全摘術を施行したため喉頭温存率は4/5例(80%)であったが,観察期間中(34~87か月,平均64.6か月)全例局所再発なく非担癌生存中である。術後の喉頭機能ではGRBAS評価において気息性の成分が強かったが,最長発声持続時間は全例14秒以上であり日常生活上の会話に支障はみられなかった。嚥下機能では,すべての症例で誤嚥性肺炎をきたしたものはなく気管切開孔は閉鎖され唾液のクリアランスも良好であり普通食の摂食が可能であった。
結語:喉頭部分切除術は局所制御率が高く,術後の音声,嚥下機能に関しても化学放射線療法に比較して著しく劣るものではなかった。喉頭部分切除術は放射線治療後の救済手術としてばかりでなく,放射線治療に対する抵抗性が危惧されるようなT2および一部のT3症例に対して初回治療として用いることは有用であると思われる。
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© 2013 特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
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