頭頸部外科
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原著
鼻副鼻腔悪性腫瘍に対して開頭手術と鼻内内視鏡または外切開を併用して摘出した4症例
波多野 篤結束 寿森下 洋平原山 幸久長岡 真人岡野 晋清野 洋一鴻 信義小島 博巳
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2016 年 25 巻 3 号 p. 421-428

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抄録

鼻副鼻腔腫瘍進展例に対する手術では外切開による拡大切除を行うが,その際副鼻腔深部操作時における十分な視野の確保が問題となる。今回われわれは,当科において鼻副鼻腔悪性腫瘍に対して開頭手術または外切開による腫瘍摘出時に内視鏡下鼻内操作を併用した手術を施行した4症例を経験したので,手術時の操作性および術野の利点と欠点に対する評価を加えて報告する。内視鏡下減量術と放射線施行後に再発した前頭篩骨洞扁平上皮癌症例,篩骨洞腺癌症例,鼻腔癌肉腫症例の3例に対しては前頭蓋底手術を施行し,鼻骨後方に再発した腺様嚢胞癌の1例に対しては鼻外側切開術を行った。4症例に対して外切開を施行し術中内視鏡を用いて鼻内からのアプローチを併用した手術操作を行った。鼻腔後方深部においても,内視鏡操作により明るく明瞭な術野を確保でき明視下操作が可能であった。頭蓋底および,鼻腔前方部の骨切り操作では外方からの骨切りが有用であり,その際に内視鏡を用いて内腔から腫瘍周囲に安全域をつけた部位を明視下に確認しつつ,鼻内から照明することで外側からの骨切り操作を補助した。この操作により腫瘍に切りこむことなく必要かつ最小限の確実な切除を行うことができた。さらに,症例によっては頭蓋底手術においても頭皮冠状切開のみで,顔面皮膚切開を回避することができた。
鼻副鼻腔悪性腫瘍の進展例に対しては外切開による拡大切除も必要となるが,その際に内視鏡を併用して鼻内からの観察を併用することで,切除範囲を必要かつ最小限なものにすることが可能であった。さらに顔面皮膚切開を回避した根治切除が可能な症例があることより,鼻内外からのアプローチによる腫瘍切除は有用であると考える。

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