2016 年 25 巻 3 号 p. 463-467
内視鏡下鼻内副鼻腔手術の合併症での動脈性出血の責任血管として内頸動脈,前・後篩骨動脈や蝶口蓋動脈は良く知られている。今回,非常にまれと考えられる眼動脈の走行異常に伴う出血を経験した。症例は71歳男性。慢性副鼻腔炎に対する手術操作時に篩骨洞内を走行する眼動脈を損傷した。通常の止血術では出血のコントロールがつかず,血管造影下での塞栓術を行った。この時,3D-造影CTと眼動脈3D-DSAを併施することでより的確に出血部位が同定され塞栓処置を行うことが可能であった。術後,一時的に眼窩内出血と眼瞼浮腫により視力低下を来したが,経過とともに視力は術前の状態にまで回復した。現在,術後9か月が経過するが視力障害等は認めていない。