抄録
耳介に発生した非神経線維腫症I型の悪性末梢神経鞘腫瘍の1例を経験し治療経過について報告する。
症例は67歳男性で,5か月前から左耳介出血を自覚し,他院で外傷疑いにて加療されていたが改善なく当科を受診した。耳介腫瘤の診断のため行った生検では紡錘型腫瘍細胞を認めS-100,SOX10が陽性であり,遺伝子検索では明らかな異常がないことから,悪性末梢神経鞘腫瘍の診断となった。治療はマージンを20mmに設定し,深部は側頭骨骨膜まで切除を行った。術後の骨露出に対して,耳後部島状皮弁にて再建を行った。術後の形態は良好で,3年経過し再発を認めていない。診断には免疫染色,遺伝子検索により鑑別疾患の除外が必要であり,十分なマージンを取った手術が有効であった。