抄録
眼窩吹き抜け骨折で稀に緊急手術を要する病態がある。若年者で眼窩周辺の外観と画像所見に重症感がなく,眼球運動障害が高度である特徴を持つものがその代表であり,最近ではwhite-eyed blowout fractureと呼ばれている。 今回,受傷当日に受診,14日目に経上顎洞法で手術を行ったが,術中所見から緊急手術の適応があったと考えられた16歳の眼窩下壁吹き抜け骨折症例を経験した。予後不良が懸念されたが術後5ヶ月でほぼ治癒した。本報告例のような外眼筋の嵌頓絞扼所見は,一度経験するだけで緊急手術の必要性を痛感するものであり,経験のない臨床医も見逃さないよう十分な注意が必要であることを啓蒙すべきである。