2020 年 8 巻 3 号 p. 275-278
前頭洞炎のまれな合併症であるPott’s puffy tumor(PPT)の1例を報告する.症例は13歳男性.前医総合病院受診の約2週間前より前頭部痛を自覚,0病日に発熱,前頭部腫脹が出現したため1病日に前医総合病院の救急外来を受診した.頭部造影CTで副鼻腔炎,前頭部皮下膿瘍を認め前頭部が腫瘍状に突出するPPTに特徴的な所見を呈した.保存的治療が開始されたが12病日のMRIで前頭部皮下膿瘍の拡大と硬膜外膿瘍を認めたため外科治療介入が必要と考えられ14病日に当院へ転院搬送とされた.当科および脳神経外科で15病日に内視鏡下鼻副鼻腔手術,開頭硬膜外膿瘍除去術を施行した.術後438日現在,再発なく経過良好である.PPTは抗菌薬の発達により,非常にまれな疾患となってはいるが,治療の遅れが重大な合併症を引き起こすため,いまだ留意すべき疾患である.