1991 年 59 巻 12 号 p. 1365-1370,a1
西広板羽目堰は, 千葉県市原市を流れる養老川に設けられた潅漑用取水堰である。その特徴は木柱を組立て, そこに水圧を利用して板を縦に2段に押し当てて堰上げするものである。河川の洪水時には両岸の張を人力によって外すことで, 堰の中央から一瞬のうちに開放することができる。しかし昭和53年にコンクリート可動堰が板羽目直下流に建造されたために板羽目堰は廃止され, 同時に文化財の指定を受けることになった。近年, 公開のため構築人員の確保が困難となり, 技術の継承が危ぶまれている。本報では, 農業水利史上特筆すべき板羽目堰の構築技術について紹介するとともに, その機能保存の課題について検討した。