農業土木学会誌
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利根川周辺地域の水環境ストックの認識と評価
山本 徳司筒井 義冨岡本 佳久
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1997 年 65 巻 6 号 p. 585-592,a1

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抄録

農村環境整備計画に当たっては, 地域の景観, 生態系, 歴史・文化などの農村の特徴を十分に生かした保全・整備の推進が望まれている。そのためには, 地域に住む人々がいかに地域の環境を意識し, また, いかにして環境を形成してきたのかを検討する必要がある。
そこで, 本報告では, 利根川の流れに端を発する上流から下流までの代表的な4つの地域を対象とし, 地域の水環境ストックが地域住民にどのように認識され, 評価されているかについて検討した。その結果, 地域の水環境ストックとして大きな役割を果たすはずの農業水利施設が, ダム, 調整池の認識は高いものの, その他の施設はほとんど認識されていないこと, 全体的に農業用水に関わる施設として認識されていない事実から, 景観創出や生態系保全を考慮した整備がそれぞれの単一目的の整備に止まらず, 農業用水を根幹とした用水システムそのものの理解を促進する施設としてプレゼンテーションされていくことの必要性を論じた。また, 地域住民と地域外住民との水環境ストックの認識・評価の異同により, 水環境ストックには, 地域特有の認識と地域に関係なく共通な認識を持つストックがあることが明確となった。
今後の水環境ストックを活用した環境整備においては, ストックの認識特性の違いから地域特性を把握した上で, 環境の保全・整備がなされることが望ましいことを提言した。

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© 社団法人 農業農村工学会
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