滋賀県琵琶湖集水域の北東部に位置する湖北地区では, 人々は農業や日々の生活を通して水に対する畏敬の念を培ってきた。しかし, 高度経済成長期の農業生産に特化した土地改良事業は, 結果的に人と水との間に物理的な距離を強いてしまった。さらに, 農業生産の効率化や生活様式の都市化によって農村地域の水質が悪化し, 心理的な距離も広がった。今, 水との新たな関係を築くべく, 新事業が動き出している。事業で変容する局面を観察すると同時に, 先人の水とのっきあい方を掘り起こし, これからの “人と水とのかかわり” を考えたい。本報では, 生活面での水利用の変化, 湖北用水の問題点, 湖北用水の多面的機能の経済評価法などを紹介する。