2021 年 20 巻 2 号 p. 99-114
本研究は,初めて小・中学校で特別支援学級の担任となった教員を対象に,年度当初に直面する課題と特別支援学級担任としての初期適応プロセス及びそれを支えた効果的なサポートを明らかにすることを目的とした。担任になって4か月経過した時期にインタビュー調査を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)による分析を行った。その結果38の概念と7のカテゴリー,20のサブカテゴリーが生成された。また,調査対象者の初期適応の状況と利用された主なサポート資源の分析も実施した。初めて特別支援学級を担任する教員の年度当初の心理の特徴として,潜在的に抱いている特別支援学級へのネガティブなイメージである「特別支援教育意識」が背景にあり,人事異動を通して「教員として認められていない」と感じる自尊心の傷つきと経験や専門性のない未知の分野の職務への不安である「教員キャリアの揺らぎ」を抱くことが明らかになった。しかし効果的なサポートを受けて子どもの見方が変わり,指導力の向上を実感することで特別支援教育への意識が変っていく初期適応のプロセスが明らかになった。また初期適応の促進要因として,身近な経験者の果たす役割が大きいことが明らかになった。今後の課題としては,年度当初の不安が高い時期に身近な相談ができる教員の配置,初期段階の研修システム,そして専門機関の効果的な活用があげられる。