2000 Volume 4 Issue 2 Pages 112-117
前報(投稿中)において, 児童が使用する包丁の大きさは, 恐怖感を排除するために市販の刃渡り約10cmのむきもの包丁と同じ程度の大きさがよいが, 重さについては市販のむきもの包丁(約50g)より重い方が, 力の負担が軽減されることが明らかになった. 包丁の総合評価としての使いやすさは, 包丁を握る手を通して伝わる感覚に因るところが大きく, 円筒を握る際に発揮される力の程度は, 径の太さによって異なる(高橋勝美等, 1995)ことから, 包丁の柄の形状や太さの違いが使いやすさに大きく影響を及ぼすと推察する. そこで本報は, 同じ大きさ, 重さ, 形状で, 異なる柄の太さの3種の包丁を作製し, 包丁の持ちやすさと柄の太さ, 手指の大きさとの関連を切断による官能検査を行い調べた. 検査においては包丁の切れ味を考慮せずに, 持ちやすさに対する回答を依頼したことから, 本論においては「使いやすさ」の用語使用は避け「持ちやすさ」を使用した.
被験者はTable 1に示す児童計101名と, 成人32名の総計133名である. 児童被験者の身長平均値を全国平均値(1998年度学校保健統計調査, 1998)と比較すると, いずれの学年も全国平均値に近似していた.
2―2 手指の測定手指の測定個所をFig. 1に示す. 手長, 手幅, 手掌長, 親指の長さ, 人差し指の長さ, にぎり拳の大きさ(以下, にぎり拳と記す.)の合計6ヵ所を測定した.
2―3 使用包丁, 切断物検査には前報の視覚選定による「使いたい包丁の選定」において選択率が高かった鎌形のむきもの包丁(以下, むきもの包丁と記す)の柄の太さの異なるものを3種作製し使用した(Table 2, Fig. 2). 「包丁太」の柄は通常は出刃包丁や菜切り包丁に, 「包丁中」の柄は小さめの出刃包丁に, 「包丁細」の柄が今回使用のむきもの包丁に本来取り付けられている柄にあたる. 刃を研ぎ出していない包丁を使用したため市販のむきもの包丁より10g程度重い. 刃をつけていないため切断物には前報より柔らかい2%濃度の粉寒天ゲル3cm角柱を使用した. 包丁の持ち方は握り型を採用し, 非連続による切断を行った.
2―4 持ちやすさの検定切断後に被験者に持ちやすい包丁の順位付けを指示し, 持ちやすい包丁を1点, 持ちにくい包丁を3点, 中間の包丁を2点としてKramerの検定法により検定を行った.
2―5 持ちやすい柄の太さの傾向と手指の大きさ被験者を細めの柄を持ちやすいとするグループと, 太めの柄を持ちやすいとするグループに分け, 持ちやすい柄の太さの傾向と手指の大きさの関係を調べた.
細めの柄と太めの柄のグルーピングは, 包丁に係数を, 持ちやすさに点数を配し, これらの積算値を算出して行った. 「包丁太」の係数を1, 「包丁中」の係数を2, 「包丁細」の係数を3とし, 最も持ちやすいを3点, 中間を2点, 最も持ちにくいを1点とした. 積算値は14, 13, 11, 10点のいずれかになる(結果及び考察の項のTable 6参照). 最大の14点は, 「包丁細」が最も持ちやすく, 「包丁太」が最も持ちにくい時の得点になることから(包丁計数“細”3×持ちやすさ3点+包丁計数“中”2×持ちやすさ2点+包丁計数“太”1×持ちやすさ1点=14), 14, 13点のグループを「細い柄が持ちやすい」グループ, 11, 10点のグループを「太い柄が持ちやすい」グループとした.

Panelist

Points of Measurement for Hand and Finger

Dimension of Kitchen Knives

Kitchen Knives
手指の大きさ(平均値)と持ちやすい包丁の順位結果をTable 3に示す. 児童の手指の大きさに性差による違いが認められなかったことから, 男女を合わせて集計した. 手指の大きさの低学年と中学年の測定個所の全てに有意差が認められ, 手指の大きさが異なることがわかった. 中学年と高学年間で有意差が認められたのは「親指の長さ」のみであった.
持ちやすい包丁の順位については, 中学年と高学年においてそれぞれに有意差が認められ, 中学年は「包丁細」が持ちやすく, 「包丁中」が持ちにくく, 高学年は中学年と逆に「包丁中」が持ちやすく, 「包丁細」が持ちにくいことがわかった.
成人の包丁の持ちやすさの男女別集計のうち, 「女」の「包丁細」に有意差が認められ, 持ちにくいことがわかった. 男女合計の集計においては, 「包丁中」が持ちやすく, 「包丁細」が持ちにくいく, 高学年児童と同様の傾向にあることがわかった.
3―2 児童の「持ちやすい包丁」と「持ちにくい包丁」による分析児童の手指の大きさと, 持ちやすい柄の太さとの関連をさらに明確にするために, 最も持ちやすいとして選択した包丁, および最も持ちにくいとして選択した包丁別に, 手指の大きさを調べた(Table 4, 5). 児童と成人の手指の大きさの違いが, 児童の学年間の差に比べるとはるかに大きいことより, 児童のみを分析対象とした.
Table 4の「持ちやすい包丁」別の分析については, 包丁間おけるに手指の各部の大きさに差は認められなかったが, Table 5の「持ちにくい包丁」別の分析においては, 「包丁太」と「包丁中」の「手長」, 「手掌長」, 「親指の長さ」の間に, 「包丁太」と「包丁細」の「手掌長」, 「親指の長さ」の間に有意差が認められた. 「親指の長さ」は前掲Table 3の児童の発達段階別の手指の大きさの分析においても, 低学年と中学年ならびに中学年と高学年の間に1%の有意水準で差が認められ, 手指の大きさのうち最も違いがみられた部位である.
3―3 持ちやすい柄の太さの傾向と手指の大きさ先の「持ちやすい包丁」と「持ちにくい包丁」による分析は, 中間に位置する包丁を排除しているが, 被験者の中には持ちやすい包丁の1位と2位, 2位と3位の順位付けに悩んだ者もいた. そこで, 選択の中間に位置した包丁種に配慮し, 「持ちやすさの傾向」としてとらえ点数化による分析を行った. 結果をTable 6に示す. 細めの柄を持ちやすいとする52名のうち低学年は17名, 中学年は26名, 高学年は9名であった. 一方, 太めの柄を持ちやすいとする49名のうち低学年は18名, 中学年は6名, 高学年は25名であった. 中学年が細めの包丁を, 高学年が太めの包丁を持ちやすいとする傾向にあるなか, 低学年は細め太めの両方に半数ずつ分かれており, 低学年の官能評価能力に問題があるのではないかと推察する.
そこで, Table 6の値から低学年の値を排除して再集計し, 中・高学年分析対象にした結果をTable 7に示す. 細めの柄を持ちやすいとするグループと, 太めの柄を持ちやすいとするグループ間において, 手指の大きさのうち「手幅」, 「手掌長」, 「親指の長さ」に有意差が認められ, 手指の大きさのなかでも「手幅」, 「手掌長」, 「親指の長さ」が持ちやすい包丁の柄の太さに特に影響を及ぼすことがわかった. なお, 「手幅」, 「手掌長」, 「親指の長さ」の値と身長との相関係数は, 0.59, 0.62, 0.57で, いずれの場合も1%の有意水準で相関があることが認められたことから, 身長を目安として持ちやすい太さの柄を選定できることがわかった.

Dimension of Fingers and Ranking of Handy Grip of Kitchen Knife

Relationship between Handy Grip of Kitchen Knife and Finger Size

Relationship between Unhandy Grip of Kitchen Knife and Finger Size

Relationship between Inclination of Handy Grip of Kitchen Knife and Finger Size
― All School Children ―

Relationship between Inclination of Handy Grip of Kitchen Knife and Finger Size
― the middle-classes and the Upper-classes ―
使い手の手指の大きさや把持力に適した大きさの包丁使用が, 包丁技能の習得と作業の効率, 安全に大きく作用することから, 前報に続き成人と小学校低・中・高学年児童を被験者として, 本報においては同じ大きさ, 重さ, 形状で柄の太さの異なる3種の包丁を作製し, 包丁の持ちやすさと柄の太さ, 手指の大きさとの関連を切断による官能検査より調べた結果, 以下のことが明らかになった.
1. 本研究において使用したむきもの包丁の場合, 高学年児童と成人は市販時に取り付けられている柄よりも太めの柄の方が持ちやすいことがわかった. 低学年児童については, 明瞭な検査結果を得ることはできなかったが, 中学年児童が細めの柄の包丁を持ちやすいとしていることから, 低学年児童も細めの柄が持ちやすいと推察できる.
2. 従来の市販の包丁には, 包丁の大きさ, 特に刃渡りの長さにに応じた太さの柄が取り付けられているが, 今回の検査結果より, 包丁のサイズよりも使用者の手指の大きさに応じて柄の太さを選定するのがよいことを確認した.
3. 前報の物理量測定による包丁把持力の測定結果と本報の柄の太さに関する官能検査結果より, 低・中学年児童には市販のむきもの包丁と同程度の大きさと柄の太さで, 市販のむきもの包丁より重量がある包丁が適すると推定する. 高学年児童には市販のむきもの包丁と大きさは同程度であるが柄がやや太く重量がある包丁が適すると推定する.