2017 年 59 巻 1 号 p. 9-18
中学校の理科や技術科における学習活動の一部では,様々な電気回路を用いた実験が行われている。しかし,これらの実験では,電圧や電流などの物理的な状態を肉眼で捉え,肌で感じることが難しいため学習者にとって理解しにくいものであり,指導者にとっても,見えない物理現象を説明するために様々な教材や教具を駆使していたが,その効果は限られていた。本研究の目的は,拡張現実(AR)技術を用いて目に見えない電圧や電流,熱の伝搬などの物理現象を実験器具に重ねて表示することで,現実空間のみで学習することが困難であった知識や概念をより分かりやすく理解できるように学習支援することである。本論文では,電気回路を対象とするAR技術を用いた実験学習支援システムの有用性を授業実践に基づいて明らかにする。立案した学習指導計画に沿って授業実践して得られた学習者の視点による調査結果に基づき本システムの有用性を述べる。