2023 年 65 巻 4 号 p. 341-351
技術科の授業はものづくりを通した指導が行われてきた。生徒が将来にわたり主体的に問題解決するためには,問題から課題を見いだし,課題解決に向けて見通しをもって作業することが必要である。本研究ではものづくり学習における見通しを「課題解決に向けて習得した知識や技能をどのように発揮するか,予測しながら考えたり判断したりすること」と定義し,メタ認知的知識である見通しⅠとメタ認知的活動である見通しⅡに整理した。この整理に基づき,反復的なものづくりを行う題材構成と,プロジェクトマネジメントで利用されるバーンダウン・チャートを作業工程の資料とする指導を提案した。バーンダウン・チャートは流動的な作業工程の往来を可視化でき,作成や修正が容易であるため,汎用性が高い。また,中学生に対する検証では図表として読み取りやすく,利用例の想定もしやすい傾向にあった。これらの結果から,提案する指導はものづくり学習における見通しの形成に寄与することが示唆された。