抄録
EG-626は新規に合成された抗動脈硬化および抗凝集薬である. EG-626の家兎血小板におけるアラキドン酸凝集抑制作用の機序をその抗 thromboxane (TX) A2作用と関連して検討し, 以下の結果を得た.
EG-626 (3~100μg/ml) は濃度依存的に, アラキドン酸ナトリウム, ADPもしくはコラーゲンによる家兎血小板凝集を抑制し, またこの化合物 (8および50μg/ml) は prostaglandin H2 と血小板マイクロリームによって生成されたTXA2による家兎血小板凝集を抑制した. さらに, EG-626 (10および60μg/ml) は LASS (labile aggregation-stimulating substance) による家兎血小板凝集も抑制した. しかしながら, 洗滌血小板によるアラキドン酸の代謝物への変換に関しては, 何ら影響をおよぼさなかった. また, EG-626は家兎大動脈標本のTXA2による収縮を抑制したが, TXA2の生成を抑制しなかった.
これらの結果は, この化合物の家兎血小板におけるアラキドン酸凝集抑制の作用機序が, 主として, TXA2をはじめとするアラキドン酸から生成された凝集物質に対する拮抗作用に基づき, それらの血小板での生合成に対する阻害作用に基づくものではないことを示唆するものである.