日本家畜臨床学会誌
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原著
乳牛の分娩後のペースト状Ca剤投与による血中Ca濃度の改善効果
山田 裕加藤 真紀猿山 由美小中 一成内山 史一磯 日出夫
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2008 年 31 巻 3 号 p. 143-147

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抄録

乳牛は分娩時生理的に血中Ca濃度が低下し、重度の場合は起立不能となることが知られている。低Ca血症(血中総Ca濃度<7.0mg/dlまたはイオン化Ca濃度<0.9mmol/L) の予防を目的として、プロピオン酸Caを主剤としたペースト状Ca剤を分娩開始時およびその12時間後の2回経口投与し、分娩前、第2回の投与直前、分娩後1、2および3日後に採血し、無投与対照群と血中Ca濃度などを比較した。その結果、試験群における低Ca血症発症率は29.4%と対照群の44.4%より低くなる傾向がみられた。低Ca血症のため治療を行った割合も、対照群33.3%に対し試験群は17.6%と少ない傾向がみられた。分娩後の血中Ca濃度は試験群において対照群より回復が早かった。本剤投与に起因すると考えられる臨床症状および検査所見の異常は認められなかった。以上の結果より、分娩開始時または分娩直後およびその12時間後の2回のペースト状Ca剤の経口投与は、その後の低Ca血症の発生の抑制と、血中Ca濃度の回復に有効である可能性が示唆された。

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© 2008 日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
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