東北家畜臨床研究会報
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乳牛の自然流死産とその遺伝性
1.発生状況と血縁関係について
佐藤 彪鈴木 勝士内野 富弥本好 茂一
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1989 年 1989 巻 12 号 p. 50-55

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抄録

1986~1989年6月年までの間に所轄で発生した胎子側に要因があると考えられる自然流死産例51頭について、発生状況と血縁関係を調査した。その成績を要約すると、51頭の症例の内訳は流産22頭、死産と虚弱子13頭、胎子の外観と機能的奇形11頭、ミイラ変性5頭であった。年度内の発生状況は、1986年2頭、1987年8頭、1988年25頭、1989年半ばまでに16頭であり、年度内の発生率は0.37%から6.0%に増加をみた。本症の発生と年齢、産次季節および妊娠日数との関連を特定するにいたらなかった。本症と関わりのあった種雄牛は34頭で、発生の多かった種雄牛6頭の発生率は平均8.1%であり、受胎率83.2%に対し出生率は76.5%であった。症例の系統を3~5代前に逆上って家系譜をみると、8つの系統間複合交配をうけ、4.6頭の著しく高い複合交配をうけていた。近交係数は平均0.008であり、このことは、胎子の発育を阻害する因子が背景にあることを示唆した。遺伝性疾患はその家系に共通の保因系統が介存しているか否かが重要である。また、51頭の症例から10組の同一家系内発生が見い出され、Aa保因の父母牛から悪性の劣性aa接合体に変異した因子により胚や胎子の発育が阻害されて、本症が発生することが裏づけできた。したがって、本症の発生原因は常染色体性単純劣性遺伝様式によって発症し、また伝搬することが解明できた。

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