抄録
本研究はWikströmによる状況的行動理論(SAT)が示す仮説を,第3次国際自己申告非行調査(ISRD3)日本データを用いて検証するものである.個人の道徳性とセルフコントロールはそれぞれ非行行動抑制効果を有し,そして非行行動の予測において両者は相互作用効果を示すという仮説(M×S仮説)に関して,OLS重回帰分析のモデル比較により検討した.その結果,道徳性およびセルフコントロールの非行抑制効果,そして道徳性が低い個人ほどセルフコントロールの効果が強くなるという両変数間の交互作用効果が観察され,理論が示す仮説を支持する結果が示された.西洋圏において定式化されたSAT の知見の東洋人サンプルによる検証により,同理論の文化普遍性の論考の意義ならびに展望が示された.