The Journal of Information Science and Technology Association
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Aiming for operational efficiency while saving labor
On Operation of Institutional Repository
Yosuke ITO
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Article ID: 2024-004

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発表概要

DXによる業務効率化がトレンドになって久しく,機関リポジトリの運用に活用可能性を見出せるものだけでも,頻繁に新しいツールが登場しているかのように思える。最新のツールを用いれば,当然効果を期待できるが,実際には予算や環境やスタッフの習熟度などが障壁となり導入は難しいことが多い。ここでは旧来のアプリケーションや専門的な知識を過剰に要求しないツールを用いて,日々の業務を少しでも効率化しつつ,実現された環境の平準化によって業務の引き継ぎ等を容易にし,多くの人員が恩恵を受けられる状態の実現を目指す。

1. はじめに

本発表では,機関リポジトリの管理場面を想定し,業務の効率化に繋がるアイディアを提案する。筆者は情報技術の専門家ではなく,例えばコードを記述して業務を自動化,といった事は行えない。ここで紹介する事例は平均的な大学図書館員+α程度のスキルで実現可能なものになっていると期待する。

なお,筆者の業務環境ではWindows10を使用している。

2. 具体的な効率化施策

2.1 単語の登録

情報端末の文字入力に資する文字パッド(WindowsならMicrosoft IMEが標準か)には,登録されていない“単語”と,その“読み”を登録することで変換できるようにする機能がある。これは国語辞書通りの登録をする必要がない。機関リポジトリの業務では,アイテムの登録依頼を教員や紀要編集部から受け付けることになり,この時論文の参考情報としてDOIを知らされる事がある。この時,与えられた情報が「10.XXXX/XXXX」の形式では元の情報源に辿り着くために「https://doi.org/」を先頭に追加して検索する必要がある。単語の登録で,例えば「どい」(doi)の変換候補として「https://doi.org/」を登録しておくことで,この文字列をどこかからコピペしてくる手間を削減でき,またメタデータの関連識別子等にDOIを記録する場面でも手間を減らしつつURLを記述することができる。

この方法は汎用性も高く,目録でよく使う書誌コードや配架コードを分かりやすい単語に紐づけて登録すると業務効率化に繋がる可能性がある。

2.2 Excel,関数の活用

既存のツールを用いた業務効率化と言えば,Excelの関数を思い浮かべる人も多いと思われる。メタデータの編集ではExcelが頻繁に利用され,関数を活用する余地はそれなりにありそうな印象を受ける。実際には,多くの場面で有効な関数はあまりなく,メタデータ作成にあたっていくらかの前提をクリアするとある程度有効な手立てが見えてくる。

Excelの関数は,入力済みのセルを参照して別のセルに値を自動で入力するというものが主である。メタデータのテンプレート等には,参照するための値が基本的には存在しないため関数を利用しづらいが,博士論文や助成研究など,登録したいアイテムに関する情報が予めリストのような形式で存在する場合,そのファイルを参照してメタデータ作成の一部を自動化させられる可能性がある。信州大学で作成しているメタデータ作成自動化のための関数は,難しいものは使用しておらず,例えば,「=“課題番号”&[課題番号リストのセル]」などとし,[内容記述]用の値を一括で作成するといった程度である。他には,IF関数やLEFT,RIGHT関数などを活用できると,自動化できる項目を拡大可能な印象である。

2.3 使いやすいテキストエディタを選ぶ

メタデータの編集にはExcelの他,Windows端末に標準でインストールされている「メモ帳」を使うことが多い。これはテキストエディタと呼ばれるアプリケーションの一種で,TXTファイルを中心にメタデータの形式であるTSVや,CSV,HTMLといったテキスト形式のファイルを編集する際に用いられる。メタデータを実際に「メモ帳」で開くとすぐに分かる通り,「メモ帳」はTSVを閲覧・編集するには向かない仕様となっている。世の中には「メモ帳」以外にも,TSV用に特化したgPad,「メモ帳」に近い使用感ながらタブ(TSVにおける区切り文字)を可視化しているサクラエディタ,コードの編集を行なう場合に便利なVScodeなど,長所や使い勝手が差別化されたテキストエディタが多数開発されている。CSVやHTMLなど業務で使用するテキストファイルは,「メモ帳」での編集には不向きな物が多い。使用目的やスキルに合わせたアプリケーションを選択することで,業務全般が進めやすくなる効果が期待できる。

3. おわりに

業務効率化は,最新のツールを使用しなくても,既存の簡単なツールを利用することで実現可能なこともある。目を見張るような効果は期待できないかもしれないが,少ないコストで実現可能であったり,マニュアル・引き継ぎ資料の作成が容易であるなどのメリットがある。新しいツールを導入する前に,実現したいことが今の業務環境で可能かどうか検証する事も忘れずに行ないたい。

 
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