The Journal of Information Science and Technology Association
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Patent analysis study on alternative foods and future foods supply.
Searching for solutions to issues related to alternative foods such as meat substitutes from patent information.
Tsutomu KIRIYAMAJun KAWASHIMAAkira FUJISHIROKen-ichi KURIHARA
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Article ID: 2024-021

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発表概要

Open Science & Citizen Science時代において,IP Patent Information Scientistとして社会的なニーズテーマにて何かしらの社会貢献をしたい。具体的には国連が定めたSDGsテーマに沿う社会的テーマとして,「代替食と未来の食品供給に関する特許分析」を通して,社会貢献をしたい。

世の中にはオーソライズされた代替食の分類は報告されていない模様。そこで,具体的には,PDG部会の独自分類を考案した。三大分類のA,B,Cに先ず分けた。A)健常者用代替食B)患者医療用代替食C)動物用代替食とした。更に,中分類を採用して,A)を9種類のカテゴリー分類案を採用した。それらを次に列挙する。①代替肉。②培養肉。③(これらを供給応用した形で)3D-Printer食。④代替乳製品。⑤代替卵。⑥代替炭水化物。⑦植物性たんパク質製品。⑧その他A(昆虫食)。⑨その他B(海藻食,他)に分けて,特許分析を行った。

SDGs課題と気候変動の課題との関係も併せて検討した。結論として「何かしらの社会的提言ができないか」を検討した。その結果,新たな社会的な知恵を纏めて,アイデア的ではあるが,ChatGPTを活用して探りあてた5つのビジネスモデル案を提案する。

1. はじめに

川島氏が作成した公開資料「食物ロス&代替食」注1)をベース資料として,栗原氏が代替肉の特許群を調べ,ChatGPTを駆使しながら「代替食とその食料共有の基本ストーリー」を作成した。一方,藤城氏は「食物ロス&代替食」に関するWeb情報の総合的なURL資料を纏めた。それらの各種資料を受けて,筆者(桐山)がShareresearch注2)を駆使して9種類のカテゴリー特許群を調べ,THE調査力AI注3)の集約化ツールを駆使して,代表的な特許の同定調査を分業で実施した。そのPDG活動の報告も兼ねて一般口頭発表を行う。代替食は,代用食とも言われるが,本原稿では代替食の呼称を使う。

2. 目的

筆者らが所属するINFOSTA-SIG-パテントドクメンテーション(PDG)部会では,毎年活動した研究内容を纏めてINFOPROシンポジウムにて発表することを自主的義務としている。必ず,国連が定めたSDGs関連の社会テーマを扱うことを義務ともしている。Open Science & Citizen Science時代において,IP Patent Information Scientistとして社会にお役に立つことを努力目標にしている。

3. 方法

3.1 特許情報の検索と集約

代替食(代用食)のキーワードを用いて,先ず,インターネット上でWeb検索注4)(新聞情報注5)も含む)の情報収集を行った。当PDG部会の藤城氏がこの準備段階において多大な貢献をしてくれた。特許情報分析をする際には,経験則の禁止行為がある。それは,特許を調べる対象分野の基礎知識がない「全くの素人の状態でキーワードによる特許情報の検索はしてはいけない」である。理由は,代替食の分野において頻繁に用いられる表現の類似語,同義語,上位語,下位語にはどの様な表現を特許明細書に記述されるか予測と推定ができないからである。出願する発明者がどのような言葉(表現語)を使っているのか無知であり,全く予想すらできないからである。だから,先ず,インターネットで数日間,調べまくってから,その分野の基礎知識を学ぶことが必要である。代替食の主要メーカーと主要販売企業を知ることが,基礎知識としては重要である。

次の第2段階で,簡単なキーワードの積の特許検索式で3種以上の特許検索式を作り,味見特許検索をお薦めする。更に,第2.5段階として,関連するキーワ―ドを散りばめた概念検索(セマンチック検索)を3回以上実践することをお薦めする。次に第3段階として,関連特許の特許分類解析を行う。今回の代替食の特許分類解析表の事例を図2に示す。第4段階として特許検索の本検索を特許分類(IPC,FI,Fターム)とキーワードの組み合わせをして,3種類以上の本検索式を作成し,検索することを薦める。第5段階として,ShareresearchとDerwent Innovation注6)にて検索して得られた特許番号をJapio-GPG/FX注7)にて番号検索を行い,その結果を外部出力の専用ボタン「MT DL」を利用して,機械翻訳された日本語の「タイトル+要約+請求項」の出力データをR&D特許集約システムのTHE調査力AIに特許情報データを電子的に移植した。これを中分類のカテゴリーに対して9分類x数種類=20個以上のタイトルホルダーを作成して,代替食関連の膨大な母集団特許ホルダーを作成した。それらを簡単に纏めた事例を図1に示す。

図1. 9個のカテゴリーの特許群

図2. 特許分類解析の事例

筆者の経験則として,その分野の基礎知識を学び,その分野の素人域を脱するためには,関連明細書を少なくとも30件,合計30時間以上をかけて精読に集中するという鉄則経験則を持っている。今回の代替食の特許研究に対しても少なくとも30件の3倍以上の100件以上の特許明細書を2023年10月から2024年3月末までに合計100時間以上掛けて,明細書を読み込んだ。

3.2 各カテゴリーの代表特許

大分類のA分類を9個の中分類に分けて,代表的な特許を選んだ。数十個のホルダーの個々の特許を自分が注目する用語でハイライト反転させる機能を用いて,THE調査力AIの特許集約システムの中にて,①注目用語が存在するか,②出願人はWeb情報で得られたものと同一か,妥当か,③要約と請求項の全体内容から判断して9個の中分類カテゴリーの内容に妥当か,という3観点から判断した。三段階評価(A=該当,B=参考,C=弱い関連)と自由コメント欄と独自分類欄の三種類の評価機能を駆使して行った。その結果,9個のカテゴリー分野の代表的な特許を十数個ずつ同定できた。本発表の目的は,該当特許を網羅的に正確に抽出することではない。該当特許群の正解件数の30%以上を同定するという,所謂,易しい特許分析が目的である。9個のカテゴリーの中の事例を図3図4に示す。

図3. 代替肉カテゴリーの特許例

図4. 3D Printer食の注目特許事例

発表の当日には,図3図4と同様な9個のカテゴリーの全ての代表的事例を紹介したい。

4. 結果

4.1 独自分類の特許

THE調査力AIをフル活用して自分達の注目観点に合致した特許を,評価A(該当),評価B(参考),評価C(弱い関連)と,ノイズに分けた。

具体的な成果といて,「供給応用した形の3D Printer食」の特許事例を図4に示す。ここで,そもそも何故,代替食が必要になったのか考え,それを調べて,纏めたのを図5に示した。宗教上の問題も関係している。食料格差の問題も絡む。水資源の問題も絡むことが判明した。

図5. 何故,代替食が必要なのか。

4.2 ChatGPT支援の検討結果

INFOPROシンポジウムのメインテーマは「シン・インフォプロ~AIと再び向き合うときがきた~」である。当PDG部会でもChatGPT無料版と有料版(ChatGPT4)の両方を使用して検討した。発表原稿のストーリー作りでは,テキスト文形式で入力し,無料ChatGPTからQ&Aにてアドバイスを得た。その結果をPDG部会にて全員で自由合議を行い追加修正と訂正を行った。成果としてストーリー作りが各段に短縮された。ChatGPTの利用効果を全メンバーが実感できた。

4.3 当PDG部会の検討結果

ChatGPTのフル活用と2時間の自由討議で得た結果を下記に示す。

(1) 代替食は,持続可能な未来の食品供給に向けた重要なアプローチであり,その多様性と深化がますます注目を集めるという潮流トレンドを推測する。

(2) 異常気象の影響に対処するためには,環境への配慮と持続可能な農業の推進が不可欠である。

(3) これらの取り組みが組み合わさることで,食料不足のリスクを低減し,持続可能な未来を築く手助けになると推測する。

4.4 別分野テーマとの関連

当PDG部会メンバーの一人が「何故欧州にて3D Printer食のレストランが流行し始めたのだろうか?」と疑問を感じた。1989年にフランスにて宣言されたUNESCO宣言のWeb記事を調べてから,ChatGPT4に図6に示したQ&Aを行い,助言を求めた。その結果をみて,欧州にて3D Printer食がインテリ層の中でじわじわと普及している理由に,成る程と腑に落ちた。

図6. 3D Printer食の普及理由根拠

4.5 メンバーが提案した提言案

当PDG部会メンバーの一人が提言した結果を当PDG部会でも自由討議した結果を図7示す。また,ChatGPT4にも提言私案をQ&Aをすることで代替案を求めた。

図7. PDG部会メンバーの提言案例

4.6 ChatGPT4が提案した提言案

当PDG部会メンバーの提言私案をChatGPT4にQ&Aをした結果,図8の10個の代替案を示してきた。PDG部会が最終的に選んだ5個のビジネスモデル案に丸印をつけて示す。メンバーが提案した図7とChatGPT4が提案した図8を見比べてみると,下記の如くの違いがある。

図8. ChatGPT4の提言代替案

(1) ChatGPT4の回答は,個人に販売するリアルショップ店ではなく,Web上のマーケット店が主流である。

(2) ビジネスモデルを想定する場合には,顧客との接点の閾値を如何に下げて,多数の顧客との接点を考える必要がある。ChatGPT4はそれを理解しているが,筆者らには足りなかった観点である。

(3) ビジネスモデルでは,①如何にワンクリックで顧客を共感させ,②購買心を刺激し,③注文クリックを押させるかがポイントになるみたいだ。筆者らのビジネス提言案では死角になっていた観点である。

以上から,単に自分の中に第三者の客観的な要素を強制的に見つける自問自答方式では,個人の経験範囲と個人の知識の限界枠という壁にぶち当たっていたことが判明した。今回の研究でChatGPTを使ってみたことで,今迄の自問自答とか三人寄れば文殊の智慧の殻を突き破る手段として,ChatGPTが如何に有効であるかが実感できた。自分達の人間の自由討議と思考案をChatGPTにぶつけてアドバイスを貰うことが,第一歩として重要である。

5. 結論

Open Science & Citizen Science時代において,IP Patent Scientistとして何かしらの形で社会貢献できれば嬉しい。PDG部会の活動結果をINFOPROシンポジウムにて少なくとも発表することで社会に外部発信している。単なる検討研究の自己満足のクローズドに終わらないように気を付けている。2023年後半から2024年4月末までの研究成果は残念ながら特許出願までに至っていなく猛省している。今は,Business Intelligence Analysis Solutions時代である。単なる特許分析は完成度30点と言われ,提言まで持って行っても60点と言われ,更に特許出願や学術論文への投稿まで行って90点以上と言われる時代である。この発表機会を頂いたことに(一社)情報科学技術協会に感謝する。この発表が読者の「代替食への関心」を盛り上げる機会になれば幸いである。

注2)  Shareresearch,特許情報提供サービス,日立情報システム https://www.hitachi.co.jp/Prod/comp/app/tokkyo/sr/

注3)  「THE調査力AI」 アイ・ピー・ファイン社の特許集約システム https://ipfine.jp/tip/

注4)  Web情報;

(1) 環境省,もっと先の未来を考える,ecojin https://www.env.go.jp/guide/info/ecojin/eye/20231011.html

(2) 代替食品のトレンドと企業事例~市場の将来性と解決すべき課題~ https://corp.linkers.net/blog/openwithlinkers/7550/

(3) 代替肉とは? 注目の理由やメリット,具体的事例,今後の展望を解説 食 環境 気候変動 朝日新聞SDGs ACTION https://www.asahi.com/sdgs/article/14596830

(4) いま代替食が選ばれる理由,今日から取り入れられる事例を紹介 https://beyond-free.jp/blogs/magazine/s-b-0017

注5)  新聞情報;「代替肉」特許,日本が2位,世界人口増・菜食主義の需要つかむ,2024年5月24日,日経新聞 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO80889820T20C24A5TB2000/

注6)  Derwent Innovation,Clarivate社の特許検索システム https://clarivate.com/derwent/ja/

注7)  Japio-GPG/FX,一般社団法人日本特許情報機構が提供する全文検索と機械翻日本語での提供サービス,https://gpgfx.japio.or.jp/

 
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