Journal of Kanagawa Sport and Health Science
Online ISSN : 2436-7249
原著論文
女子サッカー部員が指導者に希求するコーチングスタイルの研究
─テキストマイニングによる指導要因の構造的検討─
星越 亮太清水 安夫
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2024 年 58 巻 1 号 p. 1-14

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抄録

【問題と目的】運動部活動を推進するに当たり,指導者と部員との間には軋轢の問題が頻繁に起こる.現在まで,コーチングに関する数多くの研究は,男性アスリートを中心として行われて来た経緯があるが,女性のアスリートを対象とした研究は少ない.そこで,本研究では,女性サッカーチームの部員を対象とした質的調査により,各部員が指導者に対して希求する,具体的な指導内容や部活組織の管理運営方法を言語的に抽出し,女性アスリートの部活動内での心理的安全性を促進するためのコーチングスタイルについて検討を行った.

【方法】2021年7月−8月に,自由記述式質問紙をGoogle Formsを用いて作成し,テキストデータのサンプリングを行った.調査対象者は,関東大学女子サッカーリーグ1部に所属する女子サッカー部において,リーダー的な役割を担う部員10名(M=20.90歳,SD=±1.45)であった.調査内容は,1)基本的属性(年齢,性別,サッカー経験年数,所属部員数),2)指導者の部活運営に関するマネジメントと部員へのコーチング方法に関する5つの仮説にもとづく質問であった.

【結果】サンプリングされたテキストデータに対して,形態素解析を行った結果,1,079語(使用語:512語)が抽出された.抽出語のうち,出現回数が3回以上の語を高頻度の出現語として第35位までをTable 1に示した.最も多く出現した語は「選手」(17件)であり,続いて「部員」(13件),「解決」(10件),「チーム」(7件),「プレー」(7件)であった.また,共起ネットワーク分析の結果,指導者に求めるコーチングスタイルに関する記述には,1)部員の成長促進,2)競技理解,3)心理的サポート,4)部員との接し方,5)指導態度という,概ね5つのカテゴリーに分類されることが示された.

【考察】本研究では,女子サッカーチームの部員を対象に,テキストマイニングの手法を用いたコーチングスタイルの評価を行った.その結果,概ね5つのカテゴリーに類型化されることが示されたことにより,女子サッカーチームの指導者は,各カテゴリーに抽出された語彙の内容を意識的にコーチングに活用することにより,女性のアスリート及び部活組織の心理的安全性を促進する上で効果的であると考えられる.一方,女性アスリートを対象とした本研究結果と男性アスリートを対象とした先行研究の結果では,指導者に対して希求するコーチング内容には,一部,異なる要素が示された.そのため,今後,女性アスリート特有のコーチング方法及び組織マネジメントの方法を具体的に検討する必要があると考えられる.

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