抄録
国内・外を問わず, 地すべり危険箇所を判定する上で, 地質・地質構造と地すべり分布の関係を把握しておくことは重要と思われる。構造線周辺では, 地すべりが多発することが知られており, 分布状況の研究も進んでいる。構造線は過去に造山作用の盛んであった, あるいは現在も進行中のプレート境界に存在し, その地質構造は複雑である。この, 構造線周辺の地質構造の相違による分布頻度の差については, 防災上重要であるにもかかわらず, 明確にモデル化されていないと考える。従って, ここでは大陸縁辺に位置する山系の中でも, 付加構造が比較的簡単でプレートテクトニクスの理論が応用し易く, 第四紀の火山も存在しない, つまり, 地質的に付加テクトニクスを使用した説明に適した事例であり, 地すべりの分布状況も知られているベネズエラ・アンデス山系のBocono構造線周辺における地すべり分布の特徴を中央構造線の例などと比較し検討したので報告する。