哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan
Online ISSN : 1884-393X
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北海道産野ネズミ類による森林の階層分割利用
阿部 永
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1986 年 11 巻 3-4 号 p. 93-106

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抄録

北海道内の植生構造が異なる四つの林において, 5種のネズミ類, エゾヤチネズミ, ミカドネズミ, エゾアカネズミ, カラフトアカネズミ, ヒメネズミによる林の階層構造利用を調査した。林内の4層 (落葉下, 同上, 地上50cmおよび150cmの植物上) に不消化物 (色の異なるプラスチック細片) を混入した餌を配置してネズミに摂食させ, 同時に地上に設置した生捕りわな内から捕獲個体の糞を回収, 分析し, ネズミ類による階層利用の程度を推定した。その結果, どのネズミ類も落葉下から150cm層までを利用したが, 垂直的ニッチ幅はエゾヤチネズミで最もせまく, ヒメネズミが最も広く, ミカドネズミとエゾアカネズミはほぼ等しくて中間であった。カラフトアカネズミについてはサンプル数が少なく不明であった。各植生間での出現状態をみると, エゾヤチネズミは全調査区に出現して最も広く分布し, ミカドネズミは3区に, エゾアカネズミは2区に, 他の2種は各々1区だけに出現した。更に, これまでに知られている各ネズミ種の食性の違いなどを加味し, 北海道の森林環境下におけるネズミ群集の構成について考察した。

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