1.北海道長万部地方より採集した49例および北海道大学に所蔵されていた125例のエゾヒグマ標本について, 犬歯歯根セメント層に見られた年輪構造および歯根の発達程度を基準として年齢査定をおこなった。
2.エゾヒグマの永久犬歯歯根は0歳では未発達であり, セメント層の沈着は, 歯根の形成の進んだ1歳の夏に初めておこると考えられた。
3.毎年継続して一定地域で捕殺されてきた長万部標本, また不特定の時期および場所より集められた北大所蔵標本のいずれも年齢構成に顕著な性差は認められず, 全体として老年齢層が少なく, 若年齢層の多いピラミッド型が見られたが, 0~1歳は, 2~3歳より逆に少なくなっていることが認められた。
4.0~1歳の年齢層が, 2~3歳の年齢層より捕獲数が少ないことの理由として, 1.5歳までは母グマと共に行動し, 春, 冬眠穴から出てくるのがおそいため捕獲されにくいこと, 逆に2~3歳では分散期に入り動きが広くなり, また冬眠穴から出てくるのが早いという理由が考えられた。