認知症患者では、行動選択を行うために必要なワーキングメモリーの形成において、現実社会からの感覚情報の占める役割が減少し、遠隔記憶として貯蔵されていた出来事記憶の占める役割が大きくなる。このために、認知症患者では、現実社会において適切とされるような行動選択がなされ難くなっており、行動心理学的症状とされる様々な問題行動を生じやすくなっている。このような状況下においても、情動や運動に対して直接的に働きかけることのできる音楽は、ワーキングメモリーの形成において、現実社会の外界情報を十分に与えることが出来るため、行動心理学的症状を軽減させるために有効である。