気象集誌. 第2輯
Online ISSN : 2186-9057
Print ISSN : 0026-1165
ISSN-L : 0026-1165
Articles
西日本の大雨時における大気大循環場の特徴~平成30年7月豪雨との比較~
原田 やよい遠藤 洋和竹村 和人
著者情報
ジャーナル オープンアクセス HTML
電子付録

2020 年 98 巻 6 号 p. 1207-1229

詳細
抄録

 本研究では、西日本で広範囲に発生した大雨イベントを引き起こす大規模な大気循環場の要因を明らかにすることを目的として、気象庁55年長期再解析を使用して西日本での過去の大雨イベント期間における大気循環場の合成図解析を行った。大雨期間における大気循環場は、朝鮮半島の対流圏上層におけるトラフ、日本の東の対流圏上層におけるリッジ、日本の南東の地上高気圧、および日本に向かって南西から流入する水蒸気フラックスによって特徴付けられる。また、シベリア上の寒帯前線ジェットに沿った準定常ロスビー波束伝播(RWPP)による明瞭な波列が、極端なイベントに先行してみられた。大気変動の時間スケールを分離した解析により、日本の南東の地上高気圧偏差は25~90日周期の変動成分が支配的であるのに対し、東シナ海(ECS)の地上低気圧偏差は8~25日周期の変動成分が支配的であることが分かった。

 次に2018年7月上旬に発生した極端な大雨イベント(HR18)の大気循環場を調査した。HR18発生時の大気循環場の特徴は、合成図解析より得られた過去の他の大雨イベントの特徴とおおむね類似している。しかし、2018年6月下旬に亜熱帯ジェット(STJ)に沿って顕著なRWPPが発生し、日本の南東で地上高気圧が強化されたことは、合成図解析の特徴と異なる。また、STJに沿った顕著なRWPPによって引き起こされた砕波に関連して、日本の南で8~25日周期の低気圧性循環が発達し、ECSに向かって北西に伝播した後、日本に伝播した。このような高気圧および低気圧の発達が同時にみられたことが、西日本への南からの極端な水蒸気フラックスに寄与したと考えられる。さらにHR18では、朝鮮半島の対流圏上層におけるシャープな構造をしたトラフによっても特徴付けられ、このトラフは8日未満の周期の高周波変動成分が支配的だった。

著者関連情報

© The Author(s) 2020. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
前の記事 次の記事
feedback
Top