気象集誌. 第2輯
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日本列島における地表の水蒸気と気温の1880年代から100年以上の長期のトレンドと変動について
柴田 清孝佐井 彩乃
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2021 年 99 巻 2 号 p. 403-422

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抄録

 気象庁によってアーカイブされた1880年代からの日本の地表気象データを水蒸気と温度の長期トレンドと長期変動に焦点を当てて解析した。ほとんどの地点において、年平均気温のトレンドは統計的に有意な1.0~2.5℃ century-1の昇温を示した。年平均相対湿度のトレンドは有意に-2~-12% century-1の減少であり、季節変動は小さかった。一方、年平均混合比のトレンドは気温や相対湿度のトレンドとは異なった空間パターンを示し、3つのタイプに分かれていた:有意な正、有意な負、トレンドなし。有意に負の-0.2~-0.3g kg-1 century-1のトレンド領域は本州の太平洋側にあり、中部東北から四国を通り東部九州に達している。有意に正の0.2~0.4g kg-1 century-1のトレンド領域は北海道、西日本の日本海側、西部九州、沖縄に分布している。これらの空間パターンは、冬季の離島を除いて、他の季節でも同様である。経験直交関数(EOF)解析の結果、年平均の気温と相対湿度のトレンドは空間的にほぼ一様かつ持続的である昇温と乾燥を表す気温と相対湿度のそれぞれのEOF-1で説明可能であった。これに対し、年平均混合比のトレンドはEOF-2とほぼ一致していた。ただし、EOF-2の寄与14%はEOF-1の49%よりかなり小さい。1960年から2018年までの近年の期間における混合比と気温のトレンドは1880年代からのより長期間のトレンドと大きく異なっていた。年平均混合比のトレンドは平均で0.0g kg-1 century-1から0.5g kg-1 century-1へと増加し、年平均気温のトレンドは1.5℃ century-1から2.5℃ century-1へと増加していた。

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© The Author(s) 2021. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
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