気象集誌. 第2輯
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Notes and Correspondence
陸面過程モデルMATSIROの流出過小バイアスの低減に向けた流出感度調査
高田 久美子花崎 直太
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2021 年 99 巻 3 号 p. 685-695

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抄録

 Minimal Advanced Treatments of Surface Interaction and RunOff (MATSIRO)は全球気候モデルModel for Interdisciplinary Research On Climate (MIROC)の陸面過程として使われており、Dunne流出と基底流出をTOPography-based MODEL (TOPMODEL)に基づいて算定している。MATSIROを用いたこれまでの実験では、流出および流出の降水に対する応答が観測と比較して過小だった。私たちはこれらのバイアスが深すぎる地下水位によるものだと推測した。地下水位は格子点平均の土壌水分をもとに、飽和閾値を用いて診断される。飽和閾値は元々、ほぼ空隙率に等しい値に設定されていたが、本研究では、閾値を空隙率の75%、50%、25%、13%以下に下げた感度実験を行い、河川流量への影響について、タイのチャオプラヤ川流域をケーススタディーとして調べた。その結果、Dunne流出と基底流出はともに増加し、河川流量の降水に対する応答も増大した。モデルによる河川流量は飽和の50%のパラメタ値の時に観測に最も近くなった。また、土壌水分とボーエン比も流出の変化に伴って大きく変化した。これらの結果は、格子点平均の土壌水分と地下水位の関係がTOPMODELにおいて重要であることを示唆している。予備的な全球実験の結果から、流出の感度は気候帯によって異なることが示された。

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© The Author(s) 2021. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
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