気象集誌. 第2輯
Online ISSN : 2186-9057
Print ISSN : 0026-1165
ISSN-L : 0026-1165
Article
大規模アンサンブル気候予測実験において見出された地球温暖化に伴う夏季北太平洋中央部でのロスビー波の砕波頻度の減少
竹村 和人向川 均前田 修平
著者情報
ジャーナル オープンアクセス HTML

2021 年 99 巻 4 号 p. 879-897

詳細
抄録

 現在気候及び将来気候を対象とする大気大循環モデルによる大規模アンサンブルシミュレーションの結果を用いて、8月の北太平洋中央部におけるロスビー波の砕波頻度の将来変化、及びそれに関連する大気循環場の特徴を調べた。現在気候実験における北太平洋中央部での砕波頻度は、再解析データと同様に、エルニーニョ・南方振動と関連することが相関解析より示された。将来気候実験における北太平洋中央部での砕波頻度は、現在気候実験と比べて顕著に減少することが分かった。将来気候実験では、アジアモンスーン循環が顕著に弱化し、その結果としてアジアジェット気流が南偏する傾向が見られた。このアジアジェット気流の将来変化に伴って、北太平洋中央部ではジェット気流の分流・減速が弱化し、それは砕波頻度の減少と関連していた。また将来気候実験では、ユーラシア大陸及び北太平洋の中緯度でロスビー波の波束伝播が弱化する傾向が明瞭であり、このことは砕波頻度の減少と整合的である。相関解析及び頻度分布の解析より、将来気候実験における砕波頻度の減少は、フィリピンの東海上での積雲対流活動の弱化と関連することが示された。さらに、ω方程式を用いた診断より、砕波頻度の減少は、中部太平洋トラフの弱化及びそれに伴う力学的上昇流の弱化を通して、フィリピンの東海上での積雲対流活動の弱化に影響を及ぼすことが示された。

著者関連情報

© The Author(s) 2021. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
前の記事 次の記事
feedback
Top