気象集誌. 第2輯
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偏光と視程(前編)
川畑 幸夫大谷 和夫
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1949 年 27 巻 7 号 p. 214-219

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抄録

以上述べたところを要約すれば次の如くである。
(i) このような高所から俯瞰した場合には,海,裾野,雲海等の偏光度は,主として目標と觀測者間の空氣分子の散亂によるもので,地面の反射等の影響を受けることは殆んどなく,天空光の偏光面,偏光度に關する從來の理論,觀測から豫想されるところと一致し,唯偏光度が天空の場合に比し小なるのみである。
(ii) 雲海の偏光度の方位に對する關係は,雲海が層雲から層積雲,積雲と發達上昇するに從い段々複雜になる。
(iii) 偏光度は大陽垂直面内で最小で,太陽垂直面より直角な方向で最大である。
(iv) 白虹,光環,月明の夜の空,雲間を洩れる太陽光線の條痕等も偏光している。然し白虹以外は今回は偏光度を量的に測定出來なかつた。
(v) コントラストの考えから豫想される如く,こゝに二つの目標があつて, (a)一方の輝度小なる目標の方が偏光度大なる場合, (b)輝度はお互いに殆んど等しく,一方だけが著しく偏光している場合等では偏光板を利用して視程を必ずよくすることが出來る。特に薄明,薄暮,月夜害の觀測に用いて效果が著しい。
(本原稿は印刷所の火災で燒失してしまつたので,手許に殘つた資料を再び綴り合せたものである。從つて後篇と連續しない部分があるかも知れないことをお断りしておく)。

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