気象集誌. 第2輯
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過冷却水の凍結機構の研究
大内 浩
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1954 年 32 巻 5-6 号 p. 119-128

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抄録

筆者は過冷却水の凍結開始の機構に関して次の三つの主要部分からなる仮説を提出した.
(i)水・氷の界面自由エネルギーに関する筆者の解釈。
(ii)固形の凍結核の表面に六角柱状の氷晶芽がまずできるという仮説(モデル)にもとずくその氷晶芽のsizeと凍結温度との関係。
(iii)氷晶芽の底面分子が(核面に)吸着可能な核面上の区域の直径が氷晶芽の太さ従ってその核物質の与える過冷却水凍結に関するcritical temperatureを決定するという仮説,すなわち核面格子構造が氷分子の吸着現象を通じて凍結温度を支配する機構。
この三仮説に基いてえられた計算結果は, expansion chamber中における氷晶形成に関するcritical temperature (-41°C, -32°C等)及び種々の凍結核(AgI, PbI2, CdI2, NaNo3, CuI, NH4I, KI, NaCl, MgO, NaF, CdO, I2, CsI)を過冷却霧にふれさせた時の凍結開始温度の実測値ときわめて良く一致する。 -41°Cは厚さ1分子層底半径1分子層で6分子からなる氷晶芽又は厚さ1分子層底半径2分子層で24分子からなる氷晶芽の発生する温度である。 -32°CはNaCl結晶を凍結核として包むNaCl水溶液薄層が水滴中にある場合のこの薄層の共晶点である。

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