抄録
成層圏と対流圏をひっくるめて解析的研究をしようとすると,多数の等圧面天気図が必要となろう(おそらく10層以上)。これでは不便なので層の数をできるだけ減らしたい。しかしどんな方法で減らすにしても大気中のじょう乱の諸性質(特に成層圏における)は十分記述されなければいけない。この問題を調べるために線型化した運動方程式系を用いて帯状流にのったじょう乱の諸性質を初期値問題として理論的に調べてみた。
まずp-座標の方程式を層モデルに適用し,層の数によって上昇気流や顕熱輸送の分布,じょう乱の不安定度がどのように違うかを調べた。20層の場合には(1)上昇速度は成層圏と対流圏で反対符号であり,150mb付近ではじょろ乱の波長によらず上昇速度は零である,(2)顕熱輸送は下部対流圏と成層圏下部で北向きである,層の数が10層以下になると成層圏のトラフ前面の下降気流や北向きの顕熱輸送が表わされなくなる。またじょう乱の運動エネルギーの2階微分をしらべてみるとじょう乱の発達は6層モデルで最大であり,それ以上に層の数を増すと次第に減少する。これは成層圏の影響が次第に入ってくるためである。(成層圏では一般にじょう乱の運動エネルギーは生成されない)。
つぎにs-座標について同様のことをしらべてみる。s-座標で4層とると,前に述べたp-座標の20層モデルによりえられた成層圏におけるじょう乱の諸性質がほぼ再現しうることが判った。この理論的な結果は実際の解析に役立つことであろう。