抄録
数値予報においては大気の上限を圏界面付近におくのが普通である。このためこの付近の境界条件のおき方が問題である。従来,中間層のバロトロピック予報を行なう立場から,その層でのultra-long waveの西進を防ぐ目的で,いわゆる,"μ2"の問題が提起され,上下境界面での境界条件をω=0としないことはすでに用いられている。この論文では,ultra-long waveの西進を防ぐという立場からでは無くて我々の経験,すなわち,境界条件をω=0とおくことにより上層の気圧系が進みすぎ,下層の気圧系が遅れるという欠陥が,境界条件をω≠0とすることにより如何に是正されるかということを解析的に説明した。その結果によると,上層の気圧系の進みすぎは,上部境界面で,ω∝-μ2(∂ZT/∂t)~-μ2(∂Z1/∂t),即ち,境界面での高度の時間変化あるいは上層の層厚の時間変化に比例(マイナスの方向に)する様におくことにより,補正される.しかし,この補正量は,気圧系の波長に依存するので,卓越する波長が異なるに応じてμ2の値も変ること,通常はμ2~10-2~10-3(100mb/m)が妥当であることが示される。