気象集誌. 第2輯
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AMTEX期間に通過した寒冷前線の立体構造,乱流,フラックス,変質
Andrew F. Bunker
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1977 年 55 巻 6 号 p. 586-605

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抄録

海上の寒冷前線の構造を調べるために,AMTEX期間に沖縄を南東方向に通過した前線を観測用飛行機エレクトラで6高度について種々の気象要素を観測した。この前線は比較的弱く典形的なものではないが,2本が間隔をおいて進み,高度2kmをおおっていた層積雲の上空には中•上層雲が存在しなかった。この前線の変遷と構造が述べられる。
前線に伴う種々の気団の特性を飛行機とラジオゾンデのデータからもとめた。気団間に基本的には積雲対流による鉛直混合があることが示される。前線の前面でおこる上昇気流域は飛行機による直接測定と,風速分布の発散量の計算からもとめたものとで良く一致し,前線の二重構造を確かとした。
各前線の前面には局所的な前線発達域が見られる。全域での平均としては,弱い前線衰弱になっているが,これは前線の背後での気団暖化による。前線域の雲層内では上向きと下向きの顕熱及び水蒸気輸送量があるが,これは乱流や直接的な積雲上昇流•浮力平衡点を越えて上昇する気塊•その後に下降してくる積雲気塊などによって生じる。前線域で測定された風速の乱れの無次元化スペクトルは接地層内で得られている普遍分布と同形であることから,ここでの乱流はせん断応力による生成項が支配的であることを示している。一方,前線通過後の寒気団内の風速の乱れはKaimalによって求められた,上空に逆転層付きの不安定境界層内におけるスペクトル普遍分布形に一致しているが,これは乱流エネルギー源としての下面加熱の顕著さを示す。

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© 社団法人 日本気象学会
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