気象集誌. 第2輯
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梅雨前線上の中間規模じょう乱の成層状況
秋山 孝子
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1979 年 57 巻 6 号 p. 587-598

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抄録

1968年7月8~12日,梅雨前線上に3箇の中間規模じょう乱が発達し,九州地方に,強い対流性降雨を降らせた。稠密な研究観測データーを使用し,それらのじょう乱内の成層状態の時間変動過程を対流活動との関連において,解析した。その結果を以下に要約する。
1. 対流不安定は中間規模じょう乱の南東象限で形成される。
2. この不安定の増大に,じょう乱の南側下層(900mb)でのθeの増大が大きく寄与している。中層(700mb)でのθe*の減少の役割は,副次的である。
3. 下層の-υ∂θe/∂yと面積平均降雨量は,同位相の変動関係を示し,また(υ∂θe/∂y)900におう成層の不安定化は,観測された∂/∂t(∂θe/∂P)の大部分を説明している。
4. 対流性強雨域の南縁部に,湿潤な不安定層(-≠θe/∂ρ~-3°K/100mb)がみられる。著しい不安定の蓄積(ある水準以上の)の後に豪雨が発生している。
5. じょう乱中心部のゾンデデーターに,積雲パラメタリゼーションモデルを適用し,雲頂高度•massflux•安定度の変化を評価した。更に,実測面積平均雨量(~8mm/hour)を用いて,ωcおよび積雲対流による安定度の変化を,~40mb/hourおよび~0.8(°K/100mb)hour-1と評価した。評価された安定度の変化量は,観測された安定度の変化をよく説明しうるものである。
6. このケース(豪雨)の成層変動状況と,tropical squall lineのそれとを比較した。対流活動後の中層でのθeの著しい増加は両域に共通している。一方,下層でのθeの著しい減少は,豪雨の場合には見られない。梅雨前線帯では,対流活動による下層のθeの減少は,前線帯へのθeの大規模水平移流によって埋合されるものと推測される。

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