抄録
観測及びモデル計算によって,0°C高度下における雪片の融解現象を明らかにする。これまで大気の湿度が融解に及ぼす効果については全く報告がない。従って,計算では特に湿度の効果に着目する。これは,雪片表面で起こる水の昇華,凝結による潜熱が外気から熱伝達で流入する熱と同様,雪片の融解速度に大きな影響を与えるからである。計算に必要な雪片の融解速度式は,松尾•佐粧(1981)の実験式を使用する。大気湿度,雪片の大きさ,密度をパラメータとして,雪片の直径,含水率,落下速度の高度変化を求める。
0°C高度下の気層が水飽和の場合,雪片は0°C高度の直下より融解を開始する。雨滴直径にして1~5mmの雪片は,0*高度下,500~600mの層内で融解を完了する。融解層の厚さは,•含まれる雪片の大きさ,密度が大きいほど厚い。一方,0°C高度下の気層が水末飽和の場合,0°C高度の下にまず非融解層が形成し,その下に融解層が形成する。非融解層の厚さは,湿度とほぼ逆比例の関係となり,たとえば湿度90%で約"120m,50%で700mとなる。一方融解層は,湿度が低く,含まれる雪片の大きさ,密度が小さいほど浅くなる。雪片の落下速度は,非融解層中ではわずかに減少し,融解層中では急速に増加する。
観測において,雪片の落下速度,含水率,質量,断面積の同時測定を行なった。雪片含水率~質量,雪片落下速度~質量の関係は,0°C以上の地上気温,相対湿度に依存し,特に高い地上気温(1°C以上)の場合,落下速度はほぼ質量によらず一定で,小さい雪片の落下速度の方が大きい雪片のものより大きい場合がみられた。これは,これまでの観測結果(孫野(1953),Langleben(1954))と異なる傾向を示している。
これらの観測結果は,モデル計算の結果を使って良く説明出来る。