成層圏突然昇温に関する Matsuno の朱駆的な数値実験が成功して以来,この荘大な自然現象が力学的な原因に由来するものであることは疑いをはさむ余地のないところである。しかし,その理論的なモデル化や衛星観測に基づく諸研究は,昇温現象の詳細にわたる理解や適切な予測に関してある程度の見通しが得られた段階に到ったばかりである。本論文では,この現象に関する最近の研究の進展ぶりを自由に論じ,あわせて,数値モデル化に際して対流圏の運動を先駆的に与えることによって生ずる偽の共鳴を避ける方法など,将来の研究のあり方についても示唆を与える。