抄録
大気境界層に関する横山らの乱流構造モデルを用いて拡散の微分方程式を解き,地上煙源からの鉛直拡散について調べた。方程式を無次元することにより,代表的な鉛直拡散幅(Zσで表わす)を境界層の高さ(h)で割った値(Zσ/h)は混合層,中立層のときX/Reh (X:煙源からの風下距離Re:拡散係数と風速および高さについての代表値を組み合わせてできる無次元パラメータ)とz0/h(Z0:地表面粗度長)で表わされることが導びかれる。安定層ではさらにh/L(L:Monin Obukhov 長さ)がもう一つの無次元パラメータになる。この結果を用いると混合層中の鉛直方向拡散幅は煙の輸送時間に依存し,中立層,安定層では風下距離だけの関数となることがわかる。
計算した結果について特徴的なことは,混合層では拡散初期のころ,Zσが急激に増加し後にゆるやかに増加するようになる。中立層,安定層ではこのような顕著な変化は認められない。また,混合層での濃度分布形は拡散初期に指数分布に近く,次第にガウス分布に近づくのに対し,安定層でははじめから既にガウス分布に近く,拡散するにつれて,益々丸みをおびた形になる。
モデルの妥当性は大気中における拡散実験および Pasquill-Gifford 線図と比較することにより検討した。