気象集誌. 第2輯
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冬季成層圏におけるプラネタリー波によるオゾン輸送準一次元モデル
川平 浩二
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1982 年 60 巻 3 号 p. 831-849

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抄録
冬季成層圏におけるプラネタリー波によるオゾン輸送機構に関して,Hartmann and Garcia(1979)が提案した準一次元モデルを基礎にして考察を行った。この論文ではオゾン変動をもたらす力学的•光化学的効果のみでなく,波と平均流の相互作用も取り入れて問題を取り扱った。
この論文で得られた主要な結論は,波によるオゾンの水平•鉛直輸送はその向きや大きさが波の鉛直構造に依存することである。例えば,波数1に関するオゾン輸送は次の点がHartmann and Garciaと著るしく異なる。すなわち,30km以上の上部成層圏においては南向き輸送になる。この差異は波の鉛直構造の違いに起因する。すなわち,上部成層圏では,伝播性の波は南向き輸送を,traPPされた波は北向き輸送をもたらすためである。一方下部成層圏では北向きかつ下向き輸送となっており,この結果はHartmann and Garciaの結果と一致する。同様な特徴は波数2に関する結果からも得られた。オゾン輸送の波の鉛直構造依存性については,波の振幅や位相の分布に基き詳細に議論を行った。
この論文で得られた輸送の特徴は,Gille等(1980)の大規模擾乱によるオゾン輸送の解析結果とよく一致している。
オゾンの南北分布の変動に関する結果から以下の事が示された。正味の極向き輸送は伝播性の構造を有する波よりもtrappされた構造を有ずる波の方がより効果的に行う。
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