抄録
桜島の爆発によって発生するインフラソニック波が,710km隔たった愛知県刈谷市において頻繁に観測されている。その伝播を調べるため,レーウィンゾンデ及びロケットゾンデの資料によって音線解析を行なったところ,多くのシグナルは上部対流圏の強い西風によって生ずる音波ダクトによって伝播することが示された。また,冬期成層圏の西風によっても顕著なダクトが形成されるが,この成層圏ダクトはアリューシャン高気圧に伴なう東風によって時折消滅するため,対流圏ダクトに比べて頻度は少ない。
これらのインフラソニック波の観測と,人工衛星による温度の観測とを組合わせることによって,直接観測データの少ない西日本上部成層圏における風についての知識を得ることが可能である。