気象集誌. 第2輯
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西部北太平洋の海面水温アノマリと ENSO イベントに関する冬季の海面風応力ベクトルの合成図解析
Part I. 海面水温変動に対する解析
花輪 公雄吉川 泰司渡邊 朝生
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1989 年 67 巻 3 号 p. 385-400

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抄録

Kutsuwada and Teramoto (1987) が評価した北太平洋上の海面風応力場を、西部北太平洋中緯度日本近海の海面水温アノマリに着目して、合成図解析手法により解析した。1961年から1984年の24年間の冬季から、海面水温アノマリにより、暖かい冬 (WW) と寒い冬(CW)のふたつのカテゴリの冬季を、それぞれ6冬季、5冬季選んだ。解析では、合成された風の応力場が、良く組織化されたものであるかを検討するため、気候値からのアノマリベクトルの安定度の図を示した。また、今回新たに、各年の冬季の風の応力場の気候値からのアノマリが、上記ふたつのカテゴリで合成された風の応力場の気候値からのアノマリとどの程度パターンが似ているかを示す、「相似度」なるパラメータを定義して評価した。その結果、ふたつのカテゴリで合成された海面風応力場は、安定度が広い海域で高く、良く組織化されたパターンを抽出したものであることがわっかた。
WW(CW) では、中緯度の偏西風が弱まり(強まり)、その軸が北(南)へ移動し、その結果、日本近海上では東アジア冬季モンスーン(季節風)が弱まる(強まる)ことがわかった。このことは、西部北太平洋中緯度海域の冬季の海面水温は、強く東アジアモンスーンに支配されていることを確認するものである。また、赤道域では、28°C以上の高い海面水温の領域が、 WW では中央部から東部に位置しており、アノマリの場はENSO年のそれとよく似ていた。実際、 WW(CW) として選択された冬季は、ENSO(ENSO+1)年の冬季を含むが、ENSO+1(ENSO) 年冬季は含んでいない。
WW の風の応力場のアノマリに対する偏西風帯域での各冬季のアノマリの「相似度」の時系列は、気象庁が用いている極東東西指数の時系列と良い一致を示した。また、海面気圧場に対する同様な合成図解析から、 WW と CW の偏西風の軸の南北変動は、アリューシャン低気圧の位置の顕著な南北褒動に対応することがわっかた。

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© 社団法人 日本気象学会
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